文化財の害虫と対策について
目 次
はじめに
古建築物等の木製文化財における最も重要な生物被害はシバンムシ等による虫害です。
長期優良住宅の実現によるストック型社会を目指す上で、文化財の虫害に関する知識は今後益々重要になると考えられます。
そこで、自身の今日までの観察経験による文化財害虫種の概要とそれらの具体的な駆除方法や予防策についてご紹介いたします。
最-重要種 ケブカシバンムシ
Nicobium hirtumIlliger
- ・ 成虫は体長3.5~6.0mm。褐色~灰褐色で全体が短毛で覆われており、背面に不定形な帯紋があります。
- ・ 成虫は夜行性で6~8月に出現します。
- ・ 卵~成虫までの生育期間は2年以上かかるものと考えられています。
※ 6月下旬~7月上旬頃が最も採集しやすい時期です。
・ マツ、ヒノキ、クス、ケヤキ、ハンノキ、ブナ、キヅタ、カシ、イチヂクなど針葉樹、広葉樹を問わず広範な樹種を加害します。
- ・ とくに古材を好むため古い家屋によく発生します。
- ・ 虫孔の密度が少なくとも木材内部の被害は非常に大きいため、神社、仏閣などの古い木造建築物では重要な害虫となっています。
・ 加害材の表面には直径約2.5~4.5mmの円形で大小様々な脱出孔が空けられ、材の中には粒状の糞が充満しています。
※ アメリカカンザイシロアリの糞との違いは、爪先で潰すと容易に粉々になることです。
※耕種的防除法として、加害を受けやすいマツ材を使用する場合は、煙で燻した材(いぶしマツと呼ばれる)を採用することで穿孔性害虫の加害を防ぐことができます。
重要種 クマバチ
Xylocopa appendiculata circumvolansSmith
- ・ 単独生活を行い4~11月にかけて出現します。
- ・ 木造建造物の垂木などに直径15mmほどの円形の孔を穿孔し、長さ20㎝前後の坑道をつくります。坑道の奥から順に数個の育房を形成します。
- ・ 木材への穿孔加害は4~6月に多く、フジなどのマメ科植物の花を好んで花粉を集め巣穴に運びます。
- ・ 夏に羽化した新成虫はそのまま翌年の春まで育房内に留まり、母蜂は古巣を利用するなどして越冬します。
要警戒 キホリハナバチ
Lithurgus collarisSmith
- ・ 体長14~17mmで黒色
- ・ 7月中旬~8月中旬にかけて出現します。
- ・ 木造建造物の梁や柱に直径7.0mmほどの円形の孔を穿孔し複雑な坑道をつくります。
- ・ 成虫はムクゲ、ニンジンボク等の花に集まり、花粉を集めて巣に運び幼虫を育てる育房を坑道内に形成します。
- ・ 巣穴に花粉を運ぶ際、孔の入り口に花粉が輪状に付着するため本種の孔であることが判ります。
参照; 北村2001 (日本昆虫学会, 昆蟲. ニューシリーズ 4(2), 49-61, 2001-06-25)
※クマバチとキホリハナバチの穿孔被害が多い場合は、耕種的防除法として、最も好んで訪花するフジやムクゲを取り除くことで営巣を軽減することができます。
※いずれも採餌場から比較的近くに営巣するため、餌を取り除くのは想像以上に効果的です。
文化財害虫の駆除方法
木製文化財の被害において本種を駆除する場合は、公財)文化財虫害研究所の認定薬剤を使用する必要があります (資料参照)。
木部への穿孔注入は原則として禁止とされ、現状以上に“傷”をつくってはいけません。
特別な仕様により、表から見えない部位に直径3mmの穿孔注入を行うこともありますが薬液の注入を高圧で処理すると剥離や破断など損壊する恐れがあるため細心の注意を要します。つまりは非破壊、非接触が最も理想的なため貴重な物においてはフッ化スルフリルや酸化エチレン等によるガス燻蒸処理もしくは(財)文化財建造物保存技術協会の監督のもと解体や部材の取り換えなど専門家による修復が実施されます。
※日本が世界に誇る匠の技について興味のある方にはこちらの刊行物をお勧めします。
「 修復の手帖 vol.1~3 」 (財)文化財建造物保存技術協会
「 文化財の虫菌害防除と安全の知識 」 2009年版 (公財) 文化財虫菌害研究所
文化財防虫防菌用認定薬剤一覧
(公財)文化財虫菌害研究所より 2019年7月現在
商品名 | 種 別 | 形 状 | 主成分の組成 | 申請会社(認定年月日) |
---|---|---|---|---|
パナプレート | 樹脂蒸散性防殺虫剤 | 板状固体 | DDVP、樹脂等 |
|
エコミュアーFTプレート | 蒸散性防殺虫剤 | 板状固体 | プロフルトリン |
|
ヴァイケーン | 殺虫燻蒸剤 | 液化ガス | フッ化スルフリル、不活性物質 |
|
えきたんくん | 殺虫剤 | 液化高圧ガス | 二酸化炭素 |
|
ふくろうくん(えきたんくんとセットで使用する) | ファスナー付 機密性バッグ | アルミ蒸着複合強化ターポリン |
|
|
アルプ | 殺虫殺菌燻蒸剤 | 液化ガス | 酸化プロピレン(アルゴンで希釈) |
|
エキヒュームS | 殺虫殺菌燻蒸剤 | 液化ガス | 酸化エチレン、1,1,1,2テトラフロロエタン |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
キシラモントラッド | 木材用防虫防腐剤 | 油剤 | クロチアニジン、プロピコナゾール、テブコナゾール |
|
水性キシラモン3W | 木材用防虫防腐剤 | 乳剤 | クロチアニジン、プロピコナゾール、IPBC |
|
オプティガード20EC | 木材用防虫防腐剤 | 乳剤 | チアメトキサム、シプロコナゾール、チアベンダゾール |
|
ケミプロザモックス20WE | 木材用防虫防腐剤 | 可溶化製剤 | チアメトキサム、シプロコナゾール、IPBC |
|
モクボーベネザーブ | 木材用防腐防蟻剤 | 水溶性剤 | ホウ素系化合物 |
|
|
|
|
|
|
ファーストガード粒剤 | シロアリ用土壌処理剤 | 粒剤 | カプリン酸、ヒバ中性剤、ウコン |
|
キシラモンMC | シロアリ用土壌処理剤 | マイクロカプセル剤 | クロチアニジン |
|
|
|
|
|
|
タケロックMCブロック | シロアリ用土壌処理剤 | 固化マイクロカプセル剤 | クロチアニジン |
|
オプティガードLT | シロアリ用土壌処理剤 | 水和性顆粒剤 | チアメトキサム、天然系増量剤 |
|
オプティガードZT | シロアリ用土壌処理剤 | フロアブル剤 | チアメトキサム、グリコール系凍結防止剤 |
|
ザモックス | シロアリ用土壌処理剤 | フロアブル剤 | チアメトキサム、グリコール系凍結防止剤 |
|
ハチクサンMC | シロアリ用土壌処理剤 | マイクロカプセル剤 | イミダクロプリド |
|
ハチクサンFL | シロアリ用土壌処理剤 | フロアブル剤 | イミダクロプリド |
|
アジェンダMC | シロアリ用土壌処理剤 | マイクロカプセル剤 | フィプロニル |
|
タケロックMC50スーパー | シロアリ用土壌処理剤 | マイクロカプセル剤 | クロチアニジン |
|
ガントナーMC | シロアリ用土壌処理剤 | マイクロカプセル剤 | クロチアニジン |
|
ガントナーSC | シロアリ用土壌処理剤 | フロアブル(懸濁)剤 | クロチアニジン |
|
シロアリハンター | シロアリ防除剤 | ベイト剤 | ビストリフルロン |
|
|
|
|
|
|
バーカットMLA | 文化財保護用ドア隙間対策用ブラシ | ブラシ台; 熱可塑性エラストマー | ブラシ毛; ポリプロピレン |
|
写真 虫害診断
料金
16,500~
円 (税込)商品紹介
関連情報
害虫・害鳥獣を安全に対策します|オオヨドコーポレーション Pテックス社
害虫対策・有害鳥獣対策の総合力で選ばれて60年。シロアリ・キクイムシ・トコジラミ・チャタテムシなど家屋害虫、コウモリ・ハト・カラス・アライグマなど害鳥獣の原因を特定し、安全に対策します。混入異物(昆虫同定)検査、研修・講演会のご依頼も承ります。お気軽にご相談ください。
商号 |
株式会社オオヨドコーポレーション Pテックス社 |
---|---|
住所 |
〒570-0092 大阪府 守口市 日光町3番12号 |
営業時間 |
8:30~17:30 休業日:土・日・祝日 |
サイト運営者 | 防蟲事業部 |
TEL |
06-6998-5201 |
|