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ヒラタキクイムシの虫害発生に伴う保証や責任

 

目 次

 


    1. 1. はじめに

 


    1. 2. 保証の有無

 


    1. 3. 真の原因

 


    1. 4. 防虫と安全性

 


    1. 5. ラワン合板の必要性

 


    1. 6. 訴訟・裁判の非合理性

 


    1. 7. 歩み寄りの必要性

 


    1. 8. 熱処理による駆除の可否

 


    1. 9. 熱処理以外の駆除方法

 

 

 はじめに

 

ヒラタキクイムシ被害で必ず問題となる発生原因と保証について、今日までの対応事例を基にまとめました。虫害訴訟,裁判の非合理性や関係者間の歩み寄りの必要性についても言及しています。今後の協議のご参考になりましたら幸いです。

 

ヒラタキクイムシ類の虫害発生後の対応は非常にトラブルになり易く、また、大変困難であることから関係者間での綿密な協議と、それに勝る関係性の構築が必要不可欠です。

 

突然の虫の発生で気苦労が絶えないことと胸中お察し致しますが、効果的な対策方法がございますので、どうかご安心ください。

 

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 保証の有無

 

近年の住宅建材は何よりも安全性が追求されており、ヒトに安全だけでなく、虫にも安全につくられています。いわば有機栽培の野菜のようなものです。

 

このため、大金を投じて床材や壁下地材を貼り換えても、その後、虫が発生しないという保証は、残念ながら全くありません。

 

同様に、大金を投じてガス燻蒸処理をご決断頂いたとしても、やはり、虫が発生しないという保証は、全くありません。

 

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 真の原因

 

そもそも、ヒラタキクイムシが新築住宅で全国的に発生するに至った原因は、平成15年(2003年)7月1日に施行された「建築基準法におけるシックスハウス対策に係る法令」等に起因します。

 

約10年ほど前から環境衛生の向上がハイレベルに達成された日本においては、住環境のさらなる快適性と安全性が社会的に求められてきました。その結果、住宅建材は飛躍的に安全性が高められたのです。

 

現在、この法令に基づいて工務店様、建材卸様、建材製造会社様、そしてお施主様が住宅を建築されています。

 

このようにヒラタキクイムシの再興は、社会的ニーズに応えた結果生じた問題であり、工務店様、建材卸様、建材製造会社様、そしてお施主様のどなたにも責任は無いのです。

 

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 防虫と安全性

 

発がん性の高いホルムアルデヒドを大量に含み、F☆☆☆☆(フォースター)規格を大きく外れる建材であれば、おそらく虫は発生しないでしょう。しかしながら、虫には悩ませられないものの健康被害を生じる恐れが高く、これらの採用は得策とは言えません。

 

快適で健康的な生活を送るためにも、安全性は妥協すべきでないのです。

 

よって、たとえ防除可能な物件であったとしても、再発生リスクが存在することを踏まえた上で、防除や改修をご決断頂かなければなりません。

 

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 ラワン合板の必要性

 

ヒラタキクイムシの発生の多いラワン合板は、建築コストを抑えてお施主様に住宅を提供しようと考えたときに必然的に採用されるごく一般的な建材です。決して虫の発生というリスクを隠して採用しているのではありません。

 

新築時から針葉樹合板を採用していれば「ヒラタキクイムシ
Lyctus brunneusStephens, 1830」の発生は回避できますが、針葉樹に発生するキクイムシ類の発生が懸念されます。また、広葉樹材に比べ針葉樹材は反りやすくヤニ(樹脂)の漏出に伴う汚損や割れに伴う異音など虫害以外の問題を生じる恐れがあります。

 

前述の通り、建材の安全性がハイレベルに高められている以上、また、安全性を優先して確保する以上は、どの選択肢を採用しても虫の発生は表裏一体につきまとう問題なのです。

 

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 訴訟・裁判の非合理性

 

ヒラタキクイムシの発生に起因した訴訟は多く、今日までに幾度となく繰り返されてきていますが、いずれの事例も円満に解決することはありません。当然のこと原告側もしくは被告側のいずれかは1/2の確率でとうてい納得のいかない敗訴となるのです。

 

ヒラタキクイムシは生物であるがゆえに、その発生の原因と科学的根拠を客観的かつ社会的に「証明」することは極めて困難です。

 

裁判はヒラタキクイムシの発生メカニズムよりも、事象に対する客観性と常識的な判断が重視されます。たとえ虫の発生した建材がその発生を助長するずさんな管理状態にあったとしても、それを発生原因として「断定」することは不可能です。このような場合は「虫の生態を考慮すると発生しかねない状況であり原因の一つとして可能性は濃厚であるものの推察の域を越えず断定はできない」のです。他に明確な証拠でもない限り請求は棄却されてしまうでしょう。また、よくある事例として、建材のごく一部にあいた虫孔を嫌だと言って全面張り替えを要求しても、「心証は理解できるものの常識的な判断で全面張り替えするほどの補償には値しない」などとなります。そもそも不確定要素の多い(ブレ幅の大きな)生物を対象に白か黒かを判断する裁判は、責任を追及する手段として不適切なのです。多大な時間と労力と金銭を使い、わだかまりを残すだけの裁判をする意味は無いものと考えます。

 

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 歩み寄りの必要性

 

末永くお住まいになる大切なお家です。メンテナンスは建築工務店様にお願いするのが一番なはずです。今一度、双方の歩み寄りを実現する現実的な対策をご検討頂ければ幸いです。

 

 

 熱処理による駆除の可否

 

スチームクリーナーを用いた熱処理によるヒラタキクイムシの駆除は、駆除可能な場合と不可能な場合とがあり、ある特定の条件のもとで明確に分岐します。

 

スチームクリーナーによるヒラタキクイムシの駆除は、ラワン合板など建材の厚みが5.5mmなら可能です。ただし、1㎡あたりの駆除に4時間以上を要します。

 

また、キクイムシ類の発生している下地材や床材の厚みが9.6mmであったとしても、日数を要しますが不可能ではありません。ただし、この場合は1㎡あたりの駆除に17時間を要します。

 

フローリング材など厚みが12mm~25mmとなる建材は、1箇所の熱伝導に少なくとも2時間以上を要することから、スチームクリーナーによる駆除は不可能です。

 

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 熱処理以外の駆除方法

 

虫の発生している建材の厚みがスチームクリーナーを用いて駆除できる5.5mm前後であっても、20㎡以上の広範囲に被害が及んでいる場合や9.6mm厚で6㎡以上に及ぶ場合は、施工に時間が掛かりすぎるため非現実的です。

 

このような場合は、殺虫剤の木部高圧注入処理および表面塗布ないし空間処理もしくは、針葉樹合板等への貼り換えが現実的な対策案となります。

 

必要となるご予算は、殺虫剤等による出張施工の場合で15万円以上を要します。

 

なお、古くからヒラタキクイムシ駆除の最終手段として有効とされてきた天幕ガス燻蒸処理は、燻蒸ガス剤に極めて高い急性毒性(吸引と同時に瞬時に死に至るか深刻な後遺症を残す)ならびに発がん性や爆発性などがあるため危険性が著しく高く、家電製品等の多い住宅を対象とした採用は困難です。また、住宅の耐震性能に影響しないヒラタキクイムシ類の駆除に適用する防除手段として、必要過大であると言わざるを得ません。

 

ご意見やご相談、ご不明な点などございましたら、いつでもお気軽にご一報ください。

 

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